運転手の割引率に正解はなかったので、決めるのをやめた

#つくったもの#設計#Webツール

Xで、運転手も割り勘なのはおかしい、という投稿が伸びているのを見た。

リプライも引用も、同じ不満で埋まっていた。ガソリン代を出しているのは運転手なのに、人数で割ると運転手も同じだけ払うことになる。運転という労力は計算に入らない。分かる、と思いながら読んでいた。

読みながら、割引率でいいんじゃないの、と思った。

全額免除にすると同乗者の負担が跳ね上がるし、同額にすると運転手が損をする。あいだを取ればいい。何割か引く。それだけの話ではないか。

その場でツールを作りはじめた。距離と燃費とガソリン単価を入れると、1人あたりの金額が出る。高速代と駐車代も足せる。

ガソリン代 割り勘計算機

ところが、作りはじめてすぐ止まった。では何%引くのか。

調べても相場がなかった

法律はない。マナーの本にもない。会社の規定でもない。

検索すると出てくるのは「運転手は少なめでいいと思う」「うちは1,000円引いてます」といった個人の話ばかりで、根拠のある数字が見つからない。当たり前で、誰も決めていないからだ。

ここで少し面白かったのは、伸びていた投稿の側も同じだったことだ。不満を言っている人はたくさんいるのに、いくら引けばいいのかを書いている人がいない。全員が同じところで止まっていた。

範囲が広いのも分かった。ゼロにする人もいれば、半額にする人もいる。ガソリン代だけ免除して高速代は割るという人もいる。

つまりこれは、相場が存在しない数字だった。

決めないことにした

最初は平均っぽい値を1つ選んで固定しようとした。その方がツールは単純になるし、使う人も何も考えなくて済む。

やめた。理由は2つある。

1つは、固定すると外れたときに使えなくなること。ツールが出した金額と自分たちの感覚が合わないと、そこで信用がなくなって閉じられる。

もう1つは、そもそもこれが話し合って決めるべき数字だからだ。ツールが勝手に決めると、話し合いを飛ばすことになる。金額の話で揉めるのは、金額そのものより「勝手に決められた」と感じるときだと思う。

なので割引率はスライダーにして、0%から自由に動かせるようにした。動かすと金額がその場で変わる。

決めるのは使う人で、計算するのがツールという分け方にした。

他にも決めなかったもの

同じ理由で、決めずに選べるようにしたものがいくつかある。

往復か片道か。入力するのは片道の距離で、往復のときは切り替える。「どうせ往復でしょう」と決め打ちしなかったのは、片道で解散する乗り方があるからだ。

高速代と駐車代。運転手の割引を適用するかどうかは人によって違う。ガソリン代は引くけど高速代は全員で割る、という考え方に理由があるのは分かる。

端数。1円のあまりをどうするかも、ツールが黙って丸めると気持ちが悪い。内訳を全部出して、見えるようにした。

逆に、決めたもの

全部を可変にすると使えないツールになる。決めた方がいいところは決めた。

距離は手入力にした。地図から自動で取る案は捨てた。地図のAPIは基本的に有料で、キーの管理も要る。無料で公開し続けるものに、月額のかかる部品を入れたくなかった。

それに、距離は多くの場合すでに分かっている。ナビに出ているし、往復なら覚えている。自動化して困るより、打った方が速い。

サーバーを持たないことにした。HTMLが1枚あるだけで、外部との通信はしない。入力した内容はブラウザの中に保存されるだけで、どこにも送られない。

これは楽をしたかったからではなくて、3つ得があるからだ。

個人が作って長く置いておくものは、この形が一番強いと思っている。

LINEで送るボタンは付けた。使う場面が「車を降りる直前」だからだ。全員が集まっていて、これから解散する。その場で金額を共有できないと、あとで送ることになって、たいてい忘れる。

決めないことと、放置することは違う

作りながら気づいたことがある。

決めないというのは、空欄にして相手に丸投げすることではない。それは不親切なだけだ。

やることは2つある。選べるようにすることと、初期値を置いておくこと。

初期値があると、そのまま使ってもいいし、違うと思えば動かせる。何もない欄を見せられると、人は入力する前に閉じる。

この形は、ツールに限らず使えると思っている。判断が必要な場面で、こちらが勝手に正解を決めない。ただし、何も出さないのではなく、たたき台は置く。決めるのは相手にする。

同じことを、まったく別のところでもやった。商品データを扱う自動化で、外部から受け取った値をこちらの判断で書き換えないというルールを作った。あれとこれは、形が同じだった。


ツールはここに置いてある。無料で、登録も要らない。

ガソリン代 割り勘計算機

割り勘の分け方そのものについては別の記事に書いた。何%が多いのかの目安も、そちらにまとめてある。

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