
落ちのある話を作るには
目次
書きかけの文章がたくさんあります。
設定も登場人物も、何を書きたいかも決まっている。なのに、最後だけが決まらない。
「この話、どうやって終わらせればいいんだろう」
これが何度も起こります。
書きかけの文章を後で読み返しても、何も学べません。
「ここが弱かった」と気づくのは、最後まで書き終えてからだからです。
でも、終われない。
そこで、落ちを作る方法を調べることにしました。
そのために、まず落語を見てみます。
落語には、終わり方の名前がある
落語の最後は「サゲ」と呼ばれます。いわゆるオチです。
そして、このサゲにはいくつかの型があります。
- 地口落ち|音の似た言葉で終わる
- 考え落ち|最後まで聞いて、意味が分かる
- 仕草落ち|最後を動作で見せる
- 見立て落ち|別のものに見立てて終わる
- 廻り落ち|話が最初のところに戻る
- とたん落ち|最後の一言で急に終わる
分類の数や呼び方は、流派などによって違うようです。ここはまだ原典で確認していません。
この6つだけを、26秒にまとめた動画も作りました。
でも、ここで面白いと思ったのは分類そのものです。
「面白いオチを考えろ」ではなく、「どんな終わり方にするかを選べる」からです。
自分で毎回ゼロからオチを発明しなくてもいい。
「この話は、最後に意味を反転させるのか」
「最初に戻って終わらせるのか」
「最後の一言で落とすのか」
と考えられる。
これは、落ちのない話を書いている人間にはかなり実用的です。
落ちを作るなら、まず「何が変わるか」を決める
落ちを考えるとき、いきなり最後の一言を考える必要はないのかもしれません。
先に見るのは、
この話の最後で、何が変わるのか。
です。
状況が変わる。
主人公の見方が変わる。
読者の見方が変わる。
最初は普通に見えていたものが、最後には違って見える。
落ちは、その「変化」を最後の一瞬に圧縮するものとして考えられます。
だから、私は落語を読むとき、最後の一言だけを見るのをやめました。
その前に何が積み重なっていたのかを見ることにしました。
マクラは、落ちを作るための準備かもしれない
落語には「マクラ」という、本題に入る前の話があります。
これまでは、ただの雑談だと思っていました。
でも、ここにも創作のヒントがありそうです。
本題で必要になる言葉や習慣を、先に話しておく。
本題で説明するのではなく、その前に仕込んでおく。
そうしておけば、最後にそれを使って落とすことができます。
これは小説の伏線にも近い。
私はこれまで、伏線は本編の中に入れるものだと思っていました。
でも、落ちに必要なものを、話の前半に置いておくと考えればいい。
そうすると、最後に突然オチを作る必要がなくなります。
最後は、それまでに置いておいたものを回収すればいいからです。
落ちのある話を作るために、7つ数える
そこで、落語を「面白いかどうか」ではなく、構造として読むことにしました。
見るのは7つです。
1. 動き
主人公は何を取りに行ったのか。
物でなくてもいい。
許し、返事、居場所、順番でもいい。
大事なのは、主人公が何かを取りに行っていることです。
2. 敵
何が主人公の邪魔をしたのか。
人とは限りません。
制度、時間、締切、自分自身でもいい。
「何も起きなかった」は敵ではありません。
何が主人公を止めたのか、具体的に指せるかを見ます。
3. 変化
最後に何が変わったのか。
状況が変わったのか。
見方が変わったのか。
どちらもなければ、最後まで読んだあとに何が残ったのか分かりにくくなります。
そして、落ちを作るなら、ここが一番重要です。
4. 人間
その人物が「自分は悪くない」と思っている場所はどこか。
悪人を探すわけではありません。
その人物から見れば、自然な感情を探します。
『蜘蛛の糸』のカンダタなら、
「この糸はおれのものだ」
と思う。
本人からすれば、自分が先に見つけたものを守りたいだけです。
だから読者も、自分を重ねられる。
5. 問い
この話は、何を問いかけているのか。
答えはなくてもいい。
「この話は結局、何についての話なのか」を考えます。
6. 積み重ね
同じことが繰り返されたとき、その意味が変わっているか。
1回目は普通だったものが、3回目には別の意味に見える。
そういうものが、最後の落ちにつながります。
7. 視点の移動
同じものを、別の人物から見るとどうなるか。
「そっちから見ると、そうなるのか」
と思う場所があるかを見る。
7つ全部を埋める必要はない
これは採点表ではありません。
むしろ、空いているところを見るための表です。
たとえば、
1〜3が強い
→ 主人公の行動や展開で読ませる話
5〜7が強い
→ 問いや積み重ね、見方の変化で読ませる話
3が弱い
→ 最後に何を変えるのか、まだ決まっていない
6が弱い
→ 最後に使える材料が足りない
というように見ます。
「全部埋まっているから良い」ということではありません。
むしろ、落ちが作れないときに、どこが足りないのかを探すための道具です。
落ちを先に考えない
ここまで考えて、少し考え方が変わりました。
「最後の一文を考えよう」とすると、何も出てきません。
でも、
最後に何が変わる?
と考えると、少し見えてきます。
さらに、
その変化に必要なものを、途中に置いておく。
そうすると、最後の一言は後から決められます。
落ちは、最後に突然生まれるものではなくて、最後に意味が変わるように、それまでの話を積み上げておくことなのかもしれません。
ただし、ここから先はまだ調べていない
ここから先には、まだ確認していないことがあります。
- サゲの分類と名前
- マクラの役割
- 三遊亭圓朝の速記が1884年に出版されたこと
- 二葉亭四迷が落語の速記を参考にしたという話
特に最後の話が気になっています。
日本語の小説の話し言葉には、落語の速記が関係していると言われています。
1884年、三遊亭圓朝の『怪談牡丹燈籠』が速記で出版された。
そして二葉亭四迷が『浮雲』を書くとき、この速記を参考にしたと、後年の文章『余が言文一致の由来』で書いているそうです。
もし本当なら、面白い。
落ちの作り方を調べていたら、日本語の小説の「話し方」の始まりまで落語につながっているかもしれない。
ただし、ここはまだ確認していません。
原文を読んでから判断します。
本当に知りたいのは、落語ではない
最初は、どうやって話を終わらせるかを知りたかっただけでした。
でも調べているうちに、別の疑問が出てきました。
日本語の小説は、どうやって今の「話し方」になったのか。
落語の解説なら、すでにたくさんあります。
でも、
落語の速記 ↓ 二葉亭四迷 ↓ 『浮雲』 ↓ 日本語の小説
このつながりを、原文まで戻って確かめたらどうなるのか。
そっちのほうが気になってきました。
まずは、三遊亭圓朝の速記を読んでみます。
話を終わらせる方法を探していたのに、気づけば、話の始まりまで戻ってきました。