「赤ちゃんは美人が好き」の論文を開いたら、AIの説明が3か所違っていた

「赤ちゃんは美人が好き」の論文を開いたら、AIの説明が3か所違っていた

#AI#調べたこと#Claude in Chrome

目次
  1. 原文を開いた
  2. 違い①「平均に近い顔だから」は、書いていなかった
  3. 違い②「学習の前からある」も言い過ぎだった
  4. 違い③「美人」を決めたのは、赤ちゃんではなかった
  5. で、差はどれくらいだったのか
  6. 締めを3回書き直した
  7. 論文サイトが1つも開けなかった
  8. だから、ブラウザ拡張に開かせた
  9. 命令文の1問目
  10. 「ダウンロードするな」と書いたら、読めなくなった
  11. モデルは軽いほうで足りた
  12. まとめ

「赤ちゃんは美人が好きらしい」と聞きました。

まだ何も知らないはずなのに、何を基準にしているのか。 そこが気になって、AIに聞きました。

返ってきた説明はこうでした。

赤ちゃんは見た顔をどんどん重ねて、頭の中に「平均の顔」を作っている。 平均に近い顔は脳が処理しやすいので、長く見る。

もっともらしい説明です。 そして3か所、間違っていました。

原文を開いた

元になったのは、この論文です。

Langlois, J. H., Roggman, L. A., Casey, R. J., Ritter, J. M.,
Rieser-Danner, L. A., & Jenkins, V. Y. (1987).
Infant preferences for attractive faces: Rudiments of a stereotype?
Developmental Psychology, 23(3), 363-369.

この記事を書いている環境からは、論文サイトが1つも開けません。PubMedもJ-STAGEも塞がっています。なのでブラウザ拡張(Claude in Chrome)に開かせました。(どうやったかは、この記事の後半に書きます)

読めたのは、共著者本人がアップロードしていたPDFでした。全7ページ、最後まで。

違い①「平均に近い顔だから」は、書いていなかった

本文に “averageness”(平均性)という言葉は、一度も出てきません。

出てくるのは “prototypic”(原型的)で、しかも疑問形です。

Are attractive faces more prototypic of the human face?
(魅力的な顔は、より「人間の顔らしい」のだろうか?)

考察の最後に、今後の課題として置かれているだけでした。

つまり1987年のこの論文は、「なぜ長く見るのか」に答えていません。 平均顔の話が検証されるのは、3年後の別の研究です。同じ著者が自分で確かめています。

要約で止めていたら、3年後の話を1987年の結論として書いていました。

違い②「学習の前からある」も言い過ぎだった

私は「生まれつきの仕組みがある証拠」と書きかけました。

でも実験の対象は生後6〜8か月と生後2〜3か月です。2か月あれば、顔はもう大量に見ています。

正しくは「言葉やメディアの影響を受ける前から」までです。

違い③「美人」を決めたのは、赤ちゃんではなかった

ここが一番大きかったところです。

顔の写真を「美人」と「そうでない」に分けたのは、大学生でした。

評価した人   大学生の男女 40名以上(論文は「40名以上」としか書いていない)
尺度         1〜5の5段階
一致度       α は .97 以上(評価者どうしがほぼ同じ点を付けた)

そして採用された写真の点数がこれです。

平均点 範囲
「美人」として使った8枚 3.46 3.0〜3.9
「そうでない」8枚 1.44 1.1〜2.0

「美人 vs ブス」ではありません。「3.5点の顔 vs 1.4点の顔」です。

著者自身もこう書いています——刺激は通常の魅力度の範囲から選ばれており、極端に魅力的/非魅力的な顔ではなかった。だから選好の程度がこの範囲にとどまった可能性がある、と。

で、差はどれくらいだったのか

「美人」とされた顔   平均 7.24秒
そうでない顔        平均 6.59秒

0.65秒です。

そして71%の赤ちゃんがこの傾向でした。 裏を返すと、3割は逆の顔を長く見ています。

生後2〜3か月のほうでは、条件によっては差が出ませんでした。偶然のばらつきと区別がつかなかった、という意味です。

使われた顔は成人女性(白人)のカラースライド16枚だけ。表情は中立、眼鏡なし、服装の手がかりは隠してあります。被験者も34人中32人が白人でした。

締めを3回書き直した

これを動画にするとき、最後の1枚を3回書き直しました。

1回目   赤ちゃんが選んだんじゃない。大学生が選んだ顔だった
        → 意味が通らない。赤ちゃんは実際に選んでいる(長く見た)
           大学生が決めたのは「見せる候補」のほう

2回目   赤ちゃんが美を知ってるんじゃない。大人と少し重なっただけ
        → 「重なった」も解釈。実験が示したのは秒数だけ

3回目   「赤ちゃんは美人が好き」とは、まだ言えない

3回目だけが、証拠の強さについての事実です。 前の2つは、赤ちゃんが何をしたかについての推測でした。

言えることと、言いたくなることは違います。


ここから、どうやって読んだか

論文サイトが1つも開けなかった

この記事を書いている環境は、外に出られません。

PubMed          開けない
PMC             開けない
J-STAGE         開けない
researchgate    開けない

「ブラウザの機能が弱いだけで、コマンドなら通るのでは」と言われて、初めて試しました。

$ curl https://example.com/
curl: (56) CONNECT tunnel failed, response 403

example.com すら通りません。 全部プロキシを経由していて、そこで弾かれています。

✕  AIが外部サイトを読めない        (能力の話)
◎  ネットワークが通していない      (設定の話)

「読めない」んじゃなく「読ませてもらえない」でした。 git は通るのに、論文サイトは通りません。

だから、ブラウザ拡張に開かせた

Claude Code        ネットワークを塞がれている  →  命令文を書く
人間                                          →  コピーして貼る
Claude in Chrome   ブラウザを操作できる        →  原文を開いて読む

AIが書いた命令文を、人間が運んで、別のAIが実行します。 人間が一番何もしていません。

命令文の1問目

論文名を出したのはAIです。その論文が実在するかどうかは、誰も確認していません。

なので1問目をこうしました。

0. そもそもこの論文は実在しますか。著者・年・巻号ページが上と違っていたら、
   正しいほうをそのまま書いてください(こちらの情報が間違っている可能性があります)

今回は実在して、書誌情報も一致していました。でも、確かめる前に書かないことにしています。

数字の指示も入れています。

・数値は画面のまま。丸めない、単位を変えない
・書いていない項目は「記載なし」。推測で補わないでください
・要旨だけしか読めなかった場合は、そう明記してください

「ダウンロードするな」と書いたら、読めなくなった

最初の命令文には、こう書いていました。

PDFやファイルのダウンロードはしないでください

これで止まりました。オープンアクセスのPDFを、開くことすらしなくなりました。

分けて書き直したら通りました。

PDFはブラウザで開いて読んで構いません。やらないのは保存(ダウンロード)です。
保存ダイアログが出たらキャンセルして、表示だけできるか試してください。

「見る」と「持って帰る」は別の動作なのに、1つの禁止で両方消していました。

モデルは軽いほうで足りた

拡張側のモデルは、上位のものに切り替えていません。

やらせているのは画面に出ている数字を、そのまま書き写す作業です。解釈も要約もさせていません。判断が要るのは、返ってきた数字を動画に入れるかどうかのほうで、そこは人間がやります。


まとめ

赤ちゃんは、大人が「3.5点」と付けた顔を、0.65秒 長く見た
3割は逆だった
なぜ長く見たのかは、この論文では分かっていない

「赤ちゃんは美人が好き」とまでは、この実験からは言えません。

そして、要約を読んでいたら、この3つは全部書けませんでした。 要約には「平均に近い顔だから」と書いてあります。原文には書いていません。

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